日本経済新聞

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オフィス街の本屋さん

勝間さん、努力で幸せになれますか

勝間さん、努力で幸せになれますか 朝日新聞出版  1,050円

「ふつうの幸せとは何か」、香山リカさんと勝間和代さんが交わした350分の激論をまとめたものです。著書『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)で、ふつうの幸せを手に入れるためには「勝間和代を目指すな」と書いた香山さん。対する勝間さんは「香山リカさんの『しがみつかない生き方』を読み、正直、迷ってしまっているあなたに読んでほしい」という帯をつけた『やればできる』(ダイヤモンド社)を発表。二人の考えや価値観はまったく違います。この本を読んで、現代社会の幸せの基準や自分にとっての幸せって何だろうと考えさせられました。


「また会いたい」と思われる人の38のルール

「また会いたい」と思われる人の38のルール 幻冬舎  1,365円

「また会いたくなる人」になるために、身に付けたい習慣が書かれています。著者は元キャビンアテンダントで、現在はイメージコンサルタントとして活動する吉原珠央さん。実際にお会いしてみると、人を引き付け「また会いたい」と思わせる素敵な方でした。そんな吉原さんが紹介する38のルールは、ビジネスにもプライベートにも役立ちそうなものばかり。読めばすぐに実践できる内容が多かったので、読まないと損。就活&婚活中の方は要チェックです。


オンエア 上

オンエア 上 講談社  1,680円

30歳定年説もある女子アナの世界。特殊な業界で身体と心をふるにつかって生きる3人の女子アナが主人公。プロデューサーと不倫中のニュース番組のメインキャスター、野球選手と交際中のスポーツ担当の女子アナ、学生の頃から付き合っている彼に卑猥な写真を流されてしまう天気担当の女子アナ。フィンクションだとわかっていても「女子アナってこうなんだ!!」と衝撃を受けてしまいました。華やかに見える女子アナの表と裏、スキャンダルだらけでワイドショー的なおもしろさがありますが、下巻になるとちょっといい話にもなっています。


WILL

WILL 集英社 1,680円

本多孝好さんの新作は、人気だった『MOMENT』の続編です。文房具屋の息子・神田と葬儀屋の娘・森野。『MOMENT』では神田が主人公でしたが、本作『WILL』の主人公は森野です。両親を亡くし、葬儀屋を継いだ森野のもとに、お客さんから葬儀以外にもいろいろと不思議な相談が持ち込まれるようになります。アメリカに住んでいる神田とは遠距離恋愛中。二人の関係は読んでいて気恥ずかしいほど「ベタ甘」な純愛。森野を取り囲む人たちも優しい人ばかりで、小説の世界でも暗い話が多い今、世の中とは逆行しているかもしれませんが、人と人とのつながりが温かく、読んでいて安心できる物語です。


無理

無理 文藝春秋 1,995円

舞台となる「ゆめの市」は、パチンコと大きなスーパーくらいしか娯楽がない、地方の寂れた都市。社会福祉事務所で生活保護の担当をしている職員、拉致され監禁された女子高生、詐欺まがいの行為で漏電遮断器を売るセールスマン、宗教にはまっているスーパーの保安員、汚職まみれの二世市議会議員、5人の話が並行して進みます。現代社会のひずみを描いていて、読むのが辛くなるくらい1点の救いもなく1mmの幸せもない物語ですが、構成が見事なのでぐいぐいひっぱられてラストシーンへ。5人がどうクロスするのか、最後がすごいです。


ヘヴン

ヘヴン 講談社 1,470円

『乳と卵』で芥川賞をとった川上未映子さん。受賞後初の作品は、標準語で書かかれた長篇小説。リズミカルな関西弁もいいですが、標準語の文体もなかなかです。中学校でいじめにあう14歳の僕とコジマ、それぞれが残酷ないじめに耐えながら、二人は文通を始め友情を育んでいきます。善と悪を題材に、大人でもない子供でもない、男とも女とも言えない14歳の少年少女の世界で何が起きているのか、見事に描ききっています。主人公の僕が成長していく姿を見て、きれいに泣けました。すごい作品。そう簡単に書けるものではないと思います。


ドーン

ドーン 講談社 1,890円

平野啓一郎さんの新作です。2033年に人類初の火星探査に成功した6人の宇宙飛行士、その中の日本人飛行士が主人公です。宇宙船の中で起きた事件や帰還後のアメリカ大統領選挙での問題、未来の世界で起こる大きな問題の数々に主人公の非常にパーソナル部分がシンクロしながら物語が進んでいきます。一人でいるときの自分と誰かといるときの自分が同じではないように、「人はあらゆる局面で分人化している」という考え方がおもしろいです。よく「キャラ」と表現されていますが、平野さんはインディヴィジュアル(個人)とディヴィジュアル(分人)と表現。SF的な楽しみ方もできつつ、純文学のおもしろさをかみしめられる新作です。


儒教と負け犬

儒教と負け犬 講談社 1,470円

『負け犬の遠吠え』の著者、酒井順子さんの新刊です。「老処女」と呼ばれる韓国の負け犬と「余女」と呼ばれる中国の負け犬に会うためにソウルと上海へ。日本、韓国、中国、三国で晩婚化が進む背景には儒教の影響があるようです。どの国の負け犬もみんな同じような悩みを抱えていたり、国によってまったく異なった事情があったり、共通点も相違点もおもしろいです。知っているようで実はあまり知らなかった儒教のことが深く書かれていたので、勉強になりました。


薬屋のタバサ

薬屋のタバサ 新潮社 1,470円

歌人でもある東直子さんの初めての長編は、幻想的な雰囲気がただよう恋愛小説。「タバサ」という名の主人公は、女性ではなく男性で、ある町で小さな薬局を営んでいます。そこに女の人がふらりと現れ、そのまま一緒に暮らすことに。まるで煙に巻かれたように、どう解釈したらいいのかわからない結末も、モヤモヤしたりイヤな感じがしないから不思議です。単語の選び方が秀逸で、短歌に近いことばで書かれているように感じます。歌人ならでは、東さんならではのことばが心地いい。小説家が書く小説とは、ひと味違う小説です。


くまちゃん

くまちゃん 新潮社 1,575円

若者の恋愛を描いた連作短編集。最初の物語で彼女をふった男の子は、次の物語で別の女性に恋をしてふられ、その男の子をふった彼女は、次の物語で違う男性に恋をして今度はふられる側にまわり……というように、一人の登場人物がふるほうとふられるほう、両方の立場で登場します。連鎖しているのがおもしろいところです。前の恋では主導権を握っていたのに、次の恋では相手にふりまわされたり、立場が弱くなったときにふった相手の心の痛みに気がついたり。恋愛のことだけではなく、それぞれの仕事についても描いているところが、さすが角田光代さん! 恋に仕事に生きる登場人物の姿がリアルです。


この胸に深々と突き刺さる矢を抜け<上><下>

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け<上><下> 講談社 各1,680円

主人公は有名週刊誌の編集長。妻と娘がいて、世間では幸せそうに見える家庭ですが、実は大きな問題を抱えていたり、主人公の職業柄、現代の日本が抱える問題も数多く取り上げられているのがおもしろいところです。仕事をエサにグラビアアイドルと寝るところから始まり、社内抗争、スクープ記事に対する上層部からの圧力、不倫など、スキャンダラスな出来事が続きます。作者の白石一文さんは週刊文春出身だけに、小説とはいえ、とってもリアルに感じます。読み出したら止まらず、上下巻を一挙に4時間で読んでしまいました。最後には点と点がつながり、読後感もなかなかです。


欲情の作法

欲情の作法 幻冬舎 1,155円

読む前は熟年向けかと思っていましたが、違っていました。相手をその気にさせるテクニックや恋愛の体験談、HOW TO SEXまで書かれていますが、さすが渡辺淳一先生! なめらかな文章で、読ませます。男性向けに書かれていますが、女性が見ても読み物として楽しめる本です。実際、若い人や女性も購入しているので、気軽に手に取っていただきたいです。欲情している男の人が減りつつある今、草食系男子にぜひとも読んでもらいたいです。俳優の児玉清さんの推薦文「錆びた血がまた騒ぎだした」が印象的でした。


LOVE LETTERS 偉人たちのラブレター

LOVE LETTERS 偉人たちのラブレター 青山出版社 1,365円

女性に人気の海外ドラマ『SEX AND THE CITY(SATC)』。昨年、映画化され、最近DVDも発売になりました。SATC ザ・ムービーの中で、主人公のキャリーが恋人ビッグに読んであげた本がこちら。架空の本が、実際に書籍になって登場しました。ナポレオンやモーツァルト、ベートーヴェンなど、偉人たちのラブレターが40通収録されています。昔も今も、どんなに優れた人であっても、女性を思う気持ちは変わらない。とってもロマンティックです。こんなラブレターをもらったら、女の人は絶対に喜びます。男性の方にも参考のため読んでもらいたいです。


猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ 文藝春秋 1,780円

リトル・アリョーヒンと呼ばれた、チェスプレーヤーの少年が主人公。唇の上下がくっついたまま生まれた彼は、手術を受けたものの人と話したりコミュニケーションを取るのが苦手。チェス盤の下に潜り込んでプレーする変わったスタイルのため、木の人形を座らせてチェスをうちます。体が大きくなることを極端に恐れた少年の一生。現実離れした不思議な話なのに、ファンタジックになりすぎず、理路整然と進んでいくのが、小川洋子さんらしいところ。小説だからこそ成り立っている物語です。チェスのシーンは哲学的。詳細に描かれていますが、チェスがわからなくても楽しめます。


チェーン・ポイズン

チェーン・ポイズン 講談社  1,680円

ごく普通の30代後半のOL。恋人のいない彼女は、たいしておもしろくもない仕事をこなすだけの毎日に孤独を感じ、死を考えるように。そんなとき、公園で出会った謎の人物に、1年間がんばったらご褒美をあげると言われ、とりあえず1年間は生きることに決めます。そんな女性の1年間と、毒物による連続自殺を追う週刊誌の記者、2つのストーリーが描かれています。トリックがすごいので、1回読んだだけでは分からない部分もあって、思い出しながらもう1度読みました。ミステリーとしても素晴らしいし、文学性も高い作品。女性の読者は、主人公のOLに共感するところがあると思います。


右岸 / 左岸

右岸 / 左岸 集英社 各1,785円

「冷静と情熱のあいだ」から10年。またまた辻仁成さんと江國香織さんの共作です。不思議な力を持つ九(きゅう)と、ちょっとあばずれの茉莉。幼なじみの二人が生まれてから高年を迎えるまでの物語を、辻さんが九の視点で、江國さんが茉莉の視点で描いています。どちらの物語もおもしろいので単体でも楽しめますが、ぜひ両方読んでいただきたい作品です。『右岸』と『左岸』、どちらから読むべきか? 二冊同時に買って、年代ごとに交互に読み進めるのがおすすめです。


初恋

初恋 新潮文庫 420円

まえがきに『私は「府中三億円強奪事件」の実行犯だと思う』と書かれたこの小説は、あの三億円事件を題材にした恋愛小説です。リトルモアから出版され、宮﨑あおいさん主演で映画にもなった話が、この7月に文庫で登場しました。主人公は5歳で父を亡くし、母に置き去りにされてから、親戚の家をたらいまわしにされて育った高校生のみすず。家庭でも高校でも居場所がなく孤独を感じていた彼女が、初めて自分を受け入れてくれる仲間を見つけたのが新宿のジャズ喫茶でした。そこで三億円事件の主犯、東大生の岸に出会い、恋をします。事件の裏に、こんな人間ドラマがあったとは! これは高校生の女の子が抱く憧れや恋心をつづった恋愛小説です。


切羽へ

切羽へ 新潮社 1,575円

小さな島に住む夫婦。妻は教師で、夫は画家。二人の関係はとても安定していたのに、東京から若い男性教師がやってきたことで変わっていきます。ミステリーや派手さはありませんが、読ませる小説です。読者が未婚か既婚か、子供がいるのかいないのかで、感じ方は違ってくると思います。私の場合、主人公夫婦の濃密な夫婦関係を見て、結婚もいいなと思ったり、時計がないようなのんびりした島の暮らしがうらやましいようなしんどいような……。著者の井上荒野さんは大好きな作家。この作品で直木賞を受賞したのをきっかけに、過去の作品も売れるようになったのが嬉しいです。


赤めだか

赤めだか 扶桑社 1,400円

身長が伸びたため競艇選手になるのを諦め、17歳で立川談志に入門した立川談春の自伝小説です。初めて談志の落語を聴いたとき、人生で最初のショックを受け、談志の弟子になろうと決めた談春は、高校を中退し、住み込みで新聞配達をしながら修行に励みます。ライバル志らくへの思いや男同士の嫉妬、葛藤がよく描かれています。一人の男がひとつの職業を全うする格好良さ、談志への深い愛を感じました。弟子だから知っている本当の談志の姿、人間立川談志の魅力など、落語のことを知らなくても十分楽しめます。それに、文章がものすごくうまい! 最初は落語コーナーで展開していましたが、文芸コーナーに置いても人気です。


さよなら渓谷

さよなら渓谷 新潮社 1,470円

児童殺害事件を取材する週刊誌の記者は、取材を進めていくうちに隣に住む若夫婦のショッキングな過去を知ることになります。児童殺害事件とは関係のない、15年前におこったもう一つの事件とは。吉田修一さんの人間描写はお見事で、ずば抜けた描写力で人間の「業」に迫ります。続きが気になり、途中でやめることができなかったので、一気に最後まで読んでしまいました。ミステリーとしてもおもしろく、文学としても成立している作品です。20代、30代の若い方に人気の作家ですが、年配の方も楽しめる本作でさらに読者層を広げた感じがします。


荒野

荒野 文藝春秋 1,764円

桜庭一樹さんの直木賞受賞後初の作品は、『私の男』(文藝春秋)の強烈な恋愛とは正反対の少女のさわやかな恋の物語。主人公は、鎌倉で恋愛小説家の父と暮らす十二歳の荒野(こうや)。既刊の「荒野の恋 第一部」『同 第二部』(ファミ通文庫)に、新たに第三部を書き下ろし、一冊にまとめたのが本書です。荒野は接触障害があって人に触れられるのがダメだったり、今時の中学生としても読めるし、ひと昔前の中学生としても読めるので、おとなも楽しめます。『私の男』で度肝を抜かれた方、桜庭一樹さんの違う世界を味わってみてください。


月と日と刀(上)

日と月と刀(上) 文藝春秋 2,500円

純文学の丸山健二さん初の時代小説です。室町時代を背景に、剣士として生き、絵師として活躍した一人の男の人生を通して、人が人たる所以を問うた長篇小説。文章と文章の間に詩のような短文が登場するという、今までの小説になかった技法が使われています。この短文がとにかく格好いい! 文章全体も格好良くて、こんな本は今まで読んだことがありません。普通の小説に感動したり、泣いたりするのに飽きた人には刺激的な本だと思います。読書通の人にこそ読んでもらいたい本です。下巻は2,150円。


言葉のミルフィーユ

言葉のミルフィーユ 文化出版局 1,365円

著名人へのインタビューと対談、エッセーがつまった小澤征良さんの新刊です。インタビューには、お父様の小澤征爾さんの同級生だという筑紫哲也さんのほか、乙武洋匡さん、江國香織さん、崔洋一さん、森英恵さんなど12人が登場。小説家としての小澤征良さんも好きですが、聞き手としても素晴らしいと思いました。「三四郎」「ミラボー橋」「キッチン」「国境の南、太陽の西」「星の王子さま」など、本のことについて書いたエッセーもおもしろく、書評も上手です。大江健三郎さんとの対談、家族や友人との絆を書いたエッセーも読み応え十分。征良さんの魅力を堪能できる一冊です。


真鶴 文藝春秋 1,500円

川上弘美の新作です。失踪した夫を待つ主人公は、女性作家。ある者に導かれて真鶴に通うようになります。夫を待ちながらも、妻子ある編集者の男性と恋に落ちる主人公。お互い必要としながらも依存しているわけではなく、そんな大人の恋愛が情感たっぷりに描かれています。二人の絡み合いがとにかく絶妙! 20代にとってはこんな大人の恋愛に憧れますが、大人の女性が読んだら共感できるところが多いのではないかと思います。恋愛小説とも幻想小説ともとれる盛りだくさんな内容で、ファンの期待を裏切らない出来。今のところ今年読んだ中で一番おもしろかった小説です。


浮世でランチ 河出書房新社 1,365円

前作『人のセックスを笑うな』から、待ちに待った山崎ナオコーラさんの2作目が出版されました。いつもひとりでランチをとる25歳のOLが主人公。人との距離感を上手に取れない彼女は、会社に勤めているのでニートではないけれど、精神的にはニートのようなもの。会社を辞め、アジアを旅し、また別の会社に就職する彼女。相変わらずひとりでランチをしているけれど、前より少しだけ人とコミュニケーションが取れるようになっていきます。今の25歳をリアルに丁寧に描いた作品です。


ナンバーワン・コンストラクション 新潮社 1,365円

鹿島田真希さんの芥川賞ノミネート作品。建築史家の大学教授とその教授の下につく小説家志望の大学院生。名前こそ出ないものの丹下健三や安藤忠雄などが手掛けた有名建築が、小説の舞台として幾度となく登場します。建物の構造とストーリーの構造を重ねるかのように、物語が進んでいくのがおもしろいです。結末に納得できるかどうか、意見が分かれるところ。ちなみに私は結末には納得できませんでしたが、十分楽しませてもらいました。


重力ピエロ 新潮文庫 660円

主人公の兄と弟、二人の兄弟愛が描かれた本作は、素晴らしいトリックが隠された本格ミステリーです。作者の伊坂幸太郎氏にとって、本作は初の直木賞候補作品。今年は『死神の精度』で再び直木賞にノミネートされています。ミステリーファンだけでなく、文芸ファンも楽しめるので、彼の作品はどれも根強い人気があります。ミステリーなのに、最後には優しさが残る伊坂ワールド。初めての方は、文庫化されたばかりのこの本からどうぞ。


ひなた 光文社 1,470円

若い女性向けのファッション誌『JJ』で連載されていた吉田修一氏の小説を単行本化。主人公は4人。ファッション誌の副編集長でバリバリのキャリアウーマンの妻と、信用金庫勤めの夫。大学生になる夫の弟とエルメスに就職した弟の彼女。それぞれの視点で春夏秋冬が描かれています。妻にカメラマンの愛人がいたり、夫はゲイだったり、設定のおもしろさが魅力。まったくタイプの異なる4人の物語が、一定の温度で書かれているのが心地よく、吉田修一氏らしい感じがします。


海の仙人 新潮社 1,365円

間もなく発売になる芥川賞受賞作「沖で待つ」も素晴らしい作品ですが、こちらの「海の仙人」もなかなか。特に絲山秋子さんを初めて読む人にオススメしたいです。感動の恋愛小説であり、泣ける一冊。主人公の男性の生き方や、女の人を優しく見守る姿がかっこいい!女性なら誰しも惹かれる、心にゆとりのある男性です。バリキャリの女性、ファンタジーという名の神様など、他の登場人物も魅力的。「沖で待つ」同様、働く女性は共感できる部分が多いと思います。


マドンナ 講談社文庫 620円

40代の男性、課長クラスのサラリーマンを主人公とした短編集。表題作「マドンナ」は、部下の女の子に片思いをする話。惹かれないように自らを律していたのに恋してしまい、若い男性社員と張り合ったり、ついつい頑張ってしまいます。ユーモアがあり、どこか哀愁もある全5編に共感を覚える方も多いのでは。中年男性の日常生活がリアルに描かれていて、おじさんを理解するのに役立つので、女性にもオススメです。おじさん達が少しかわいく思えるはず。


失踪日記 イースト・プレス 1,197円

忙しい毎日の中で、ふとこのまま消えてしまいたいと思ったことはありませんか。この本は、誰にでもありそうな失踪願望を、漫画家の吾妻ひでお氏が実行したときの話です。路上での生活や失踪中の肉体労働、警察に保護され自宅に連れ戻されたり、アルコール中毒や精神科への強制入院等々。失踪中の生活がリアルに語られています。文化庁メディア芸術祭大賞や日本漫画家協会大賞など多数受賞。がんばっている人にこそ読んでもらいたい作品です。


弁護士の仕事術・論理術 成美文庫 550円

タイトルに「弁護士」がつくものとしては異例のヒット。弁護士的な考え方や論理力、文章力のつけ方、しぐさで人をみる方法などを弁護士の矢部正秋氏が伝授。弁護士の目線で語られているところが、ビジネス書としては新鮮です。「意見」は個人の考えにすぎず、大切なのは「事実」の積み重ねであるというのは、弁護士でもビジネスマンでも同じだとしています。読んで即役立つ実用的な内容が多いのも売れている理由では。


ご臨終メディア 質問しないマスコミと一人で考えない日本人 集英社新書 714円

ドキュメンタリー作家の森達也氏と作家の森巣博氏が、対談形式でジャーナリズム論、マスコミ論を展開。靖国問題やイラク問題、ホリエモン等々、実例を挙げながら新聞・テレビの報道について鋭く切り込んでいます。これを読むと、もはや日本のマスコミはマスコミとしての機能を失っており、本来あるべき報道の役割を果たしていないことがわかります。情報の受け手である私たちが、自分の頭で考えることの大切さを痛感しました。